電子マニフェストは義務化されている?その対象とは

2024年12月25日

更新日: 2025年01月22日

2020年4月1日から、特定の条件を満たす事業者に対して電子マニフェストの使用が義務付けられました。
法令で定められている「やむを得ない事情」でない限り、電子マニフェストでの対応が必須です。
この記事では以下の内容について説明します。

  • ・マニフェスト制度の基本的な仕組み
  • ・電子マニフェスト義務化の対象と背景
  • ・登録期限や例外規定
  • ・違反した場合の罰則
  • ・運用における実務上の課題

産業廃棄物の処理を委託する事業者の方は、ぜひ参考にしてください。

そもそもマニフェスト制度とは?

産業廃棄物の適正処理を確保するため、1993年から導入されたのがマニフェスト制度です。
マニフェスト制度は、産業廃棄物の排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、処理状況を確実に把握・管理することで、不法投棄を未然に防止するための仕組みです。
この制度が導入された背景には、以前は排出事業者が委託した産業廃棄物がいつ運ばれ、いつ処理されたのかが明確にわからず、不法投棄等を未然に防ぐことが困難だったという実態があります。
マニフェスト制度の適用対象は、産業廃棄物の処理を他人に委託する場合となります。
ただし、以下のような場合は例外的にマニフェストの交付が不要となります。

  • ・市町村や都道府県に産業廃棄物の処理を委託する場合
  • ・古紙や鉄くずなど、再生利用目的の産業廃棄物の処理を委託する場合
  • ・排出事業者が自ら産業廃棄物を処理する場合

なお、マニフェスト制度の対象範囲は徐々に広がっており、1993年4月に特別管理産業廃棄物への適用からスタートし、1998年12月からはすべての産業廃棄物の委託処理に対してマニフェストの使用が義務化されています。

電子マニフェストとは

産業廃棄物の処理状況を効率的に管理するため、1998年12月から運用が開始された電子マニフェストシステムは、インターネットを通じてマニフェスト情報を登録・報告する仕組みです。
このシステムは、廃棄物処理法第13条の2の規定に基づき、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(以下、JWセンター)が情報処理センターとして指定され、運営を行っています。
システムの利用にあたって特別なアプリケーションのインストールは不要で、インターネットに接続できる環境があれば、パソコンやスマートフォン、タブレットなどから操作が可能です。
電子マニフェストを利用するためには、次の3つの事業者すべてがJWセンターが運営する電子マニフェストシステム(JWNET:Japan Waste Network)に参加することが必須となります。

  • ・排出事業者
  • ・収集運搬業者
  • ・処分業者

このシステムでは、各事業者の基本情報に加え、取り扱う廃棄物の詳細データを電子的に記録します。
オンラインシステムを活用することで、すべての関係者がタイムリーに処理の進捗を把握できるという特徴があります。
なお、このシステムの運用規定に違反した場合は、廃棄物処理法違反として罰則の対象となります。

電子マニフェスト義務化のポイント

産業廃棄物の適正処理をより確実にするため、2020年4月1日から特定の条件を満たす事業者に対して電子マニフェストの使用が義務付けられることになりました。

電子マニフェストの義務化対象

電子マニフェストが義務付けられるのは、以下の2つの条件を満たす事業者です。

  • ・前々年度に特別管理産業廃棄物の年間発生量が50トンを超える事業場を有している(ただし、PCB廃棄物は除外)
  • ・当該事業場から発生する特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を委託する

ここで重要なポイントは、発生量の基準が「前々年度」という点です。
直近の前年度が基準値未満であっても、前々年度の排出実績が50トンを超える場合は、電子マニフェストの対象事業者として扱われます。

”そもそも”なぜ電子マニフェストが義務化されたのか

電子マニフェスト義務化への動きが加速したきっかけの一つに、2016年1月に発生した廃棄食品の不正転売事件があります。
この事件では、愛知県のカレー店が廃棄用の冷凍カツの処理を委託した際、中間処理業者がこれを不正に転売し、県内のスーパーで販売されるという事態が発生しました。
このような事案が発生した場合、過去の処理記録を確認するには、大量の紙マニフェストの中から該当書類を探し出し、一つひとつ内容を確認する必要がありました。
しかし、電子マニフェストであれば、データベースから必要な情報を即座に抽出できるため、行政機関による実態把握や原因究明をより迅速に行うことが可能です。
このような背景から、特別管理産業廃棄物を大量に排出する事業者を対象に、電子マニフェスト制度が開始されました。

電子マニフェストの登録期限は?

電子マニフェストの運用において、適切な期限内での登録・報告が求められています。
排出事業者には、廃棄物の引き渡し日を起点として3日以内にマニフェストを登録しなければなりません。
同様に、収集運搬業者や処理業者も、運搬・処分終了後3日以内に終了報告を行う必要があります。
この「3日以内」という期限には、土日祝日および年末年始は含まれません。
ただし、お盆期間中は通常の営業日としてカウントされるため、期限管理には特に注意が必要です。
そのため、廃棄物の引き渡し日から可能な限り早期の登録が望ましいとされています。
登録期限に間に合わない可能性がある場合は、廃棄物の引き渡しタイミングを前後に調整することも検討しましょう。
なお、収集運搬は多くの場合、当日中に完了するため、排出事業者の登録期限と運搬業者の報告期限が同じになることが一般的です。

電子マニフェストの交付が出来ない場合は?

法令で定められた「電子マニフェストの登録が困難な場合」には、例外的に紙マニフェストの交付が認められています。
具体的には、以下のような状況が該当します。

  • ・通信システムの障害やネットワーク接続の不具合により、電子マニフェストシステムにアクセスできない状況
  • ・広域停電により電子機器が使用できない状態
  • ・災害などの異常事態によりオンラインシステムへの接続が困難な場合
  • ・離島などの地理的条件により、電子マニフェストに対応可能な処理業者が存在しない地域
  • ・一時的な廃棄物の排出で、近隣に電子マニフェスト対応の処理業者がいない場合
  • ・2019年3月31日時点で、全常勤職員が65歳以上かつシステム未導入の事業者

上記のような例外的な状況で紙マニフェストを使用する際は、その具体的な理由を伝票の備考欄に記録することが求められます。

受渡確認表票

電子マニフェストを運用する際の補助的な目的で使用される伝票が、受渡確認票です。
受渡確認票には以下の5つの情報を必ず記載する必要があります。

  1. ・運搬する産業廃棄物の種類および数量に関する情報
  2. ・産業廃棄物の運搬を委託した者の氏名または名称
  3. ・運搬する産業廃棄物の積載を行った日
  4. ・運搬する産業廃棄物を積載した事業場の名称および連絡先
  5. ・運搬先となる事業場の名称および連絡先

受渡確認票は、通常の用紙への印刷物、スマートフォンなどの電子機器に保存して、すぐに提示できる状態で携行することが求められています。

電子マニフェストを利用しなかった場合の罰則

電子マニフェストの対象事業者が紙マニフェストを使用した場合、段階的な行政処分の対象となります。
まず都道府県知事から改善勧告が行われ、これに従わない場合は事業者名が公表されます。
さらに改善が見られない場合は措置命令が発令されます。
措置命令に違反した事業者には、1年以下の懲役刑または100万円を上限とする罰金刑が科されることになります。

マニフェストに関する義務違反と罰則

マニフェストに関する重大な違反に対しては、以下のような厳しい罰則が設けられています。

  • ・委託基準違反:5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこの併科
  • ・マニフェスト不交付:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • ・マニフェスト未記載、虚偽記載、保存義務違反、確認義務違反:措置命令の対象

電子マニフェストの課題

電子マニフェストは、紙マニフェストと比べて管理・運用がスムーズで、紛失のリスクもないため業種を問わず推奨されていますが、実務上での課題も存在します。

電子マニフェスト非対応の取引先がいる

電子マニフェストシステムの利用には、排出事業者に加えて委託先となる収集運搬業者や処分業者もシステムに加入している必要があります。
現行の法制度では、すべての処理業者に電子マニフェストの導入が求められているわけではありません。
今後、対象範囲が拡大される可能性を見据えて、取引先との事前協議を行っておくことが重要です。

3日ルールに対応する

電子マニフェストには、廃棄物の排出から3日以内の登録が必要というルールが設けられています。
土日祝日は期間から除外されるものの、大型連休中の対応には注意が必要です。
この課題への対策として、廃棄物の排出当日に登録を完了させる社内ルールの策定が有効です。

紙のマニフェストのほうが臨機応変な使い方ができる?

有価物取引への対応や、複数品目が混在する廃棄物の管理など、紙のマニフェストのほうが使い勝手が良いと感じる場面があります。
しかし、電子マニフェストシステムも多様な機能を備えており、適切に活用することで柔軟な運用が可能です。
システムの操作に不安がある場合は、専門的なサポートサービスの利用も検討に値します。

電子マニフェスト活用で実現する、確実な廃棄物管理

産業廃棄物の適正処理において、電子マニフェストの重要性は今後さらに高まることが予想されます。
電子マニフェストは、事務作業の効率化だけでなく、リアルタイムでの処理状況確認や、データの透明性確保など、多くのメリットをもたらします。
一方で、取引先との調整や運用ルールの整備など、導入に向けては計画的な準備が必要です。
システムへの理解を深め、自社に適した運用方法を確立することが、スムーズな移行のカギとなります。
リビスタでは、紙マニフェスト・電子マニフェストどちらにも対応しており、不法投棄防止に向けた適正な産業廃棄物処理を実施しています。
お客様に最適な方法をご提案いたしますので、産業廃棄物処理についてのご相談は、ぜひリビスタへお気軽にお問い合わせください。

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